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自分を「ダメなやつ」と思っていた男性が死ぬ前に気づいたことってことですが、自分のことを「ダメなやつ」と思った事は何度もありますが、死ぬ前に気づくことができるでしょうか?本当に幸せな生き方とは何かを教えてくれる一冊だそうなので紹介させていただきますね。

自分を「ダメなやつ」と思っていた男性が死ぬ前に気づいたこと

幻冬舎plusより引用

死ぬ前に気づくことができるかな?これまで2000人もの終末期がん患者に寄り添ってきた緩和医療医、大津秀一先生。著書『死ぬときにはじめて気づく人生で大切なこと33』は、実際に先生が体験した患者さんとのエピソードから、本当に幸せな生き方とは何かを教えてくれる一冊です。忙しい日々を送っていると、つい忘れがちなことばかり。死ぬときに後悔しないためにも、少しだけ歩みを止めて、一緒に考えてみませんか? 33のエピソードの中から、いくつかご紹介します。

半世紀、こうして生きてきた

俺ほどどうしようもない人間はいないですよ──五十歳の谷川さんはひとりごちます。彼の病気は高度に進行した大腸がんです。谷川さんは、幼い頃に父親を亡くしています。父親の記憶は思慕の念とともに思い出されるものでは、残念ながらありませんでした。

お酒に酔った際の暴力がひどかったそうです。母親に手をあげることも何度も目撃したといいます。

父親が亡くなり、母親は女手ひとつで谷川さんを育てあげましたが、彼には、なぜ自分の家ばかり貧乏で恵まれていないのだろうかという思いが消えませんでした。高校を卒業すると、逃げるようにして都会にやって来ました。しかし、何をやっても長続きすることはなかったようです。

実家に連絡をすることはありませんでした。しなかったのか、できなかったのか、谷川さんご自身もわからないといいます。そして、突然、彼のもとに母の訃報が届きました。死に目にも会えませんでした。ひげをいじりながら、濃い顔立ちにさらに山谷を形作って、彼は話してくれました。

女性とも長続きしなかったですね──いつしか刹那的な生き方に身を委ねるようになっていました。結婚してほしそうな女性は幾人かいたようですが、彼の踏み切らない態度に業を煮やして、皆去って行きました。彼いわく、三十代まではそこそこ女性からモテていたそうです。「まあ親父もひどい親だったけど、俺もおふくろにはろくなことをしてあげられなかったから、人から優しくされないのも当たり前だよね」

言ってから豪快に笑いましたが、ちょっとさみしそうな印象がどことなくありました

「世の中にはね、どうしようもないダメな奴がいるんですよ。まあ俺よりもひどいのもたくさんいたけどね。ダメな奴はね、ダメな奴なの。だからそれは先生にも治せないからね、いいの、そのままで。とにかく半世紀もこれで生きてるんだ。仕方ないよ」やっぱり豪快に、けれどもさみしそうに彼は笑うのでした。

自分では気づいていない何かがある

死ぬ前に気づくことができるかな?こんにちは──ある日、谷川さんのもとに来客がありました。三十代前半くらいの眼鏡をかけた、大きな眼とすっと通って高い鼻筋が印象的な女性です。皆が色めき立ちます。谷川さんは自分には家族も親類もいないと言っていました。

小一時間後、彼女は帰って行きました。去り際、彼女の横顔に涙の痕があるような、そんな気がしました。私はさっそく谷川さんの部屋を訪れました。聞けば、インターネット上の人生相談サイトで、彼と彼女は出会ったそうです。

彼女も谷川さんと同様、家庭に恵まれませんでした。そして、最近、男性にもてあそばれて、「死にたい」と投稿しました。谷川さんはメールで何があったのか、どんな気持ちなのか、本人によれば聞きつくしたうえで、「死にたいのは俺も同じだけど、死ぬなよな」と送ったと言います。

私には、彼の魅力が垣間見えたような気がしました。さらに私は今日面会するに至った経緯を聞きました。

「あの子も俺もさ、頼る人は誰もいないから。たださ、なんか湿っぽい話が嫌で、ずっと重いがんだとは伝えていなかった。でもさ、もう正直、俺死んじゃうじゃない? これまでの俺の経験だと、おふくろのときのような、いきなりってのが一番キツイのよ。予告はやっぱりしてもらいたいってのがあるわけよ。だから、とうとう今日は伝えよう、ありがとう、と、さようならってね……」

彼は鼻の下に手を伸ばしました。ひげをいじっているようで、鼻腔から落ちてくる微かな涙液を押し留めているように見受けられました。つらい話を聞いてあげたとは人助けをしましたね、と私は言いました。谷川さんは「そんな大層なもんじゃない」と否定しましたが、私は譲りませんでした。「死にたいとはもう、彼女は思わないのではないでしょうか」真顔になって谷川さんは強く頷きました。

「そうだよ。俺みたいにダメな奴だって生き抜いたんだ、お前みたいな魅力的な奴だったら、絶対に幸せをつかめる、諦めるなって。俺には言う資格もないのにね……」

「谷川さん、一つ言っていいですか? どこがダメな奴なんですか! 人を支えたのならば、そんな人間がダメな人であるわけはないですよ」苦笑しながら、彼はじっと私を正面から見ました。

「先生、ありがとな。いい冥土の土産になりそうだ。ダメじゃないって思えることも大切なことかもな。少しでも役に立てたって。そう思えるだけでも、ラッキーかもしれないね。まっ根拠のない思い込みがさ、人生には大切だろ」

二人で声をあげて笑いました。

この後、ちょっとした変化がありました。「俺はダメな奴」という言葉が谷川さんから減ったのです。正当な評価のもと、彼は皆から好かれながら、その生を閉じました。多くの人は何かしら、自分では気がついていないだけで、いいところがある。彼の姿を思い出すたびに、私はそんなことを考えます。

 

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