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台湾はもう大丈夫だよ。一青妙さんが教える「花蓮」の通な歩き方
TRiP EDiter 一青妙 2018/05/12配信記事より引用
2018年2月に大きな地震に見舞われながらも、以前と変わらぬ日常を取り戻しつつある台湾東部最大の街・花蓮の魅力を、エッセイストの一青妙(ひととたえ)さんがご案内。B級グルメを取り上げた第1回、絶品スイーツが登場した第2回に続く今回は、市内に点在するレトロなおしゃれスポットと、豊かな自然と良質な温泉が楽しめる花蓮郊外をご紹介します。
リノベで魅力倍増の花蓮
花蓮は、台湾の東側にある。九州ほどの大きさのサツマイモ型をした台湾の中央には、高さ3千メートル級の中央山脈が貫いている。都市は海岸線沿いに広がり、平地は西側に多く、新幹線や鉄道などは西部での開発が優先されてきた。急峻な峡谷や断崖絶壁の多い東部の工事はなにかと難航し、遅々として進まない状況が長年続いて来た。
困難極まりないと言われ続けた花蓮港が完成したのは、日本の台湾統治も末期にさしかった1939年。以降、日本との航路がぐっと便利になり、現在では台湾4大国際商港のひとつに数えられている。花蓮港を起点といた太平洋でのイルカやクジラのウォッチングのメッカとしても人気だ。
港に沿って形成された花蓮の街に残っている日本統治時代の建物は、リノベーションが施され、おしゃれスポットとして再び生命を吹きこまれている。
昔の港湾局宿舎や倉庫群をリノベーションしたカフェやギャラリー、民宿が花蓮港すぐ近くの「The Leaf Inn 葉宿文旅」だ。一部屋ごとに、異なった台湾人デザイナーがデザインを施し、ユニークで個性がある。
- The Leaf Inn 葉宿文旅
- 花蓮県花蓮市民生路55号
- http://www.theleafinn.com/
近くには樹齢100年を越える立派な琉球松がシンボリックに植えられた観光スポット「松園別館」がある。日本統治時代は「花蓮港兵事部」として建てられ回廊式の二階建て洋館だ。軍事指揮を執ると同時に、上級士官の接待宿泊所として利用されてきた。また神風特攻隊員が出征前に天皇からの「御前酒」を賜る場所だったとも言われている。台湾で最も保存状態のよい日本統治時代の軍事施設であり、カフェやお土産ショップもあるので、ゆっくりと建物や展示を見学し、のんびりと過ごせる。
- 松園別館
- 花蓮県花蓮市松園街65号
その近くには、日本統治時代の日本軍の高官用の木造宿舎群「将軍府」がある。当時の指揮官であった中村大佐の宿舎も含まれている。漢人たちは「偉い人」が住んでいるということで「将軍府」と呼んでいたらしい。
- 将軍府
- 花蓮県花蓮市中正路622巷6号
築70年以上も経過した日本家屋がリノベーションされたカフェも
築70年以上も経過した日本家屋がリノベーションされ、古本屋とカフェに生まれ変わった人気店もある。2003年にオープンした「時光書店」だ。台湾のテレビ局・大愛の記者として活躍してきた呉秀寧さんが開いたのだが、記者が古本屋を開いたということで、当時は業界関係者の話題となった。
店内は壁面全体が本で埋め尽くされ、まるで図書館のようだ。白熱灯の優しい灯りと店の雰囲気が徐々にネット上で評判を呼び、いつの間にか、花蓮を代表する文芸空間として認められるようになった。
呉秀寧さんは数年前に、軽食と読書を楽しめるリノベ喫茶店を開いた。1939年に建てられた日本家屋を改装したから名前は「時光1939」にした。外観が気に入って、ボロボロの古家を借り、丁寧に改装した。
やっと見つけた敷地内の庭には飛び石や灯籠が置かれ、細部まで気の利いた装飾が施され、店には靴を脱いで上がる。各部屋の間の仕切りは取り払われ、適度のプライベートでなおかつ開放感もあり、置かれている長机や学校机、丸テーブルもそれぞれ個性的で面白い。一度腰をおろしたら、自宅に戻ったような気持ちになり、なかなか離れがたいほど居心地がいい。
- 時光二手書店
- 花蓮県花蓮市建国路8号
- http://blog.roodo.com/bookslight
- 時光1939
- 花蓮県花蓮市民国路80巷16号
- http://blog.roodo.com/timelight1939
市の中心には
市の中心には、「説時依舊」という民宿がある。築80年以上の耳鼻科診療所の日本家屋をリノベーションしたものだ。建物の持つレトロ感を全面的に押し出し、なかなか雰囲気がある。持ち主の耳鼻科の先生は90歳を超えているが、元気に隣の家で暮らしている。運がよければ、庭先で毎日体操をしているおじいちゃん先生と日本語で会話を楽しめるかもしれない。
もっとワイルドな宿泊体験をしたければ、「巷小老宅子What Inn」がある。こちらは築100年以上の清朝時代の古民家をリノベーションした民宿だ。宿泊だけでなく、夜にはちょっとした居酒屋にも変身する。仲間とワイワイガヤガヤ語り合いながら、ディープな花蓮ライフが体験できるだろう。
- 巷小老宅子What Inn
- 花蓮県花蓮市新港街61巷7号
自転車で台湾の原風景を巡る
花蓮には豊かな自然が残され、台湾の原風景に出会える場所がまだまだたくさん残されている。
鉄道の花蓮駅を降りると、台湾が世界に誇る自転車メーカー・ジャイアントのレンタサイクルショップがある。宿泊施設でも、レンタサイクルを備えているところが多い。晴れた日にはサイクリングで花蓮を回って欲しい。
きれいな砂浜が続く海岸線沿いの七星潭一帯にはサイクリングロードが整備されており、早朝は地引網が引く漁師の姿も見ることができる。遠くに与那国島や名所の清水断崖を望むことができ、足元には波に削られた色とりどりの綺麗な石ころがキラキラと太陽の光を反射し、さわやかな気分が味わえる。
また、市内から離れるが、「瑞穂温泉」や「安通温泉」のように、実に泉質のよい隠れ家的な温泉も充実しているので、リラックスできる。
- 瑞穂温泉
- 瑞穂駅からバスかタクシー
- 安通温泉
- 玉里駅からタクシー
ちかごろは、あまり環境のよくない台北など西側に住んでいた人たちが、空気や水のきれいな東側の花蓮などに移住するケースも増えている。都会から、新しいノウハウやカルチャーを持ち込んだ移住者によって、花蓮の街は進化し、さらに魅力的なものへ変化している。心身ともにリラッックスできる花蓮を満喫しない手はない。
写真提供/一青妙