北海道や東北地方で初雪が観測されたり関東でも群馬県で初雪が観測されたり段々と秋から冬になってきましたね。そこで”寒くなってきたので温泉に”と簡単に温泉地には行けないけど近くのスーパー銭湯は”温泉”なの?”温泉”と書いてあるけど実際にはどうなんでしょうか?
目次
温泉が恋しい季節だからこそ、本物の温泉を考える
それ、「本物」の温泉なのですか?
日本には温泉と名が付くものは非常に多いもの。
「やっぱり、寒い季節には温泉でゆっくりしたいやね……」こんなことを思っている人も多いのではないでしょうか?
しかし、温泉旅館で入っているお風呂、それが「本物の」温泉なのかどうなのか? ということに答えられる人は少ないのではないでしょうか。昔は湯治場として小さな温泉宿しかなかったようなところに他の旅館が建てられる、お客が来るから増えていく……というのが、全国各地にある温泉地の成り立ちなのですが、元々源泉は有限なもの。湯治宿1軒ならばともかく、多くの温泉宿が必要としてるほどの大量の温泉を供給する能力が備わっていなかったりするのです。
あまりにもゆるい、温泉の定義とは
すると温泉宿が考えるのは、自前で源泉を掘り当てること。しかし、都合よく温泉がわいてくれるとは限りません。ボーリングの結果地下水でも当たってくれたら儲けもの、それをボイラーで加熱してあたかも熱い湯が湧き出ている温泉のようにして、提供するのが常となっているケースがとても多いのです。
「え、熱いお湯が湧き出ていないって、それって温泉じゃないんじゃないの?」しかし国が定めた「温泉法」によると、温泉の定義は以下の通り。
・源泉温度が25度以上であること。
・リチウムイオンや水素イオンなど19の特定成分のうち1つ以上が既定値に達していること。掘り当てた地下水が25度以上あれば、それで立派な温泉……って、25度のなんて、お湯どころかぬるま湯ですらありません。加えて源泉温度ですから、地上に出てきた湧き水の温度ではなく掘り当てた箇所の温度でいい。ボーリングして掘り当ててマグマの影響でぬるくなっている地下水はすなわち温泉なのです。
特定成分の含有量ですが、例えばリチウムイオンなら1リットル中に1mg以上含まれていれば、それで温泉を名乗ることができるということ。これって誤差じゃないの? と、いいたくなるほどの微量でしかありません。しかし、その時点で温泉を名乗ることができるのです。
人工とか天然とか、どれもこれも怪しいもの
そういえば、湯船に天然鉱物を沈めただけという、人工温泉や準天然温泉と名乗る入浴施設がありますが、まあそれでも温泉は温泉、何もおとがめがないというのはこういう理屈。だって、温泉成分がお湯には溶けているのは事実ですから。天然であれ、人工であれ、どれも「本当の」温泉であることは、温泉法のもとでは間違いがありません。
近所の源泉から地下水を汲んで来て、それを自前のボイラーで沸かす。
そして、うちは天然温泉ですから……と名乗っている旅館がどれほど多いことか。それで満足している人がどれだけ多いことか。「それで旅館も儲かっているんだし、お客さんも喜んでいるんだから何も問題ないじゃない?」
そんな声もあるでしょう、その点については犬助も反論するつもりはありません。
商売下手という一言で片付けてよいものか
ご主人の話によると、近所で地盤改良工事が始まって以来、源泉が枯れ始めてついに湯をわかすのに十分な量が出なくなってしまったからだとか。
ちなみにそこの看板に書かれていた文字は「鉱泉」……地下水を沸かしていることを明言していました。ならば、適当にボーリングしてまた地下水を掘り当てればいいじゃない? と聞いたところ、それだけの資本力もないし、もし掘り当てても、長い間続いてきた泉質と同じとは限らない。泉質が変わってしまっては、湯治に来られる方の期待に応えられないから、湯治宿を閉めるしかないというのです。
豊かな資本で都心の真ん中で地下水を掘り当てて、加熱して温泉とうたって商売をしているところもあれば、何の因果か源泉が枯れて商売を続けられなくなっているというところもあるという。
潰れた湯治場の商売が下手といってしまえばそれまでの話なのですが、大きな湯船に浸かる度に、このことを思い出さずにはいられなくなる。まあ、営業していたころからずいぶん寂れていましたから、源泉が枯れてしまわずとも、その湯治宿の先は長くはなかったと思うのですが……ただ、本物の温泉とは何かということについて、考えたくなるのです。