窃盗、暴力、性…まるで“老成”していない高齢者たちの「裏社会」(下)
週刊ダイヤモンド2015年12月19日号特集「老後リスクの現実 [リアル]」より
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「生」が延びれば「性」も長寿化 80歳のAV女優も
こうして、「高齢者だから」と優しく接せられる言動を都合よく解釈し、高齢男性が一方的に思いを募らせては迷惑行動に及び、トラブルを引き起こす事例は枚挙に暇がない。
15年10月にも、都内で行きつけの喫茶店に勤める20代の女性ウエートレスに、「結婚してほしい」などと書いたラブレターの受け取りを拒否され、激高した78歳男が「ぶっ殺してやる!」と脅迫したとして逮捕された。
『「ストーカー」は何を考えているか』の著者で、NPO法人ヒューマニティ理事長の小早川明子氏が言及する。
「『人生でやり残したことは恋愛だけ』と口にする高齢男性は大変多い。その恋愛願望の心底には、『まだプレーヤーとして現役でいたい』といった若さへの執着も潜んでいるのです」
結婚適齢期が現代より格段に早かったこともあり、今の高齢世代ではいくつもの恋愛を経験してパートナーを選んだ人はまれだ。人生経験は豊富でも恋愛体験に乏しければ、自己コントロールを失って猛進をも招きかねない。
しかも、現代では老いても性行為に及べる「バイアグラ」等のクスリが安価で入手可能とあれば、“老いらくの恋”への希望や、下半身も“生涯現役”を続ける夢は一層断ち切り難くなる。
「60代の男性は現役、70代はクスリ使ってハッスル。80過ぎだってちゃんと“ヤる”のよ。奥さんがいても『相手にならないから』と、スポーツクラブに行くふりをして利用する常連客も多い。だってシャワー浴びて帰っても怪しまれないでしょ」と笑うのは、71歳の現役ホテヘル嬢だ。実は今、性風俗業界で働く還暦過ぎの“超熟女”はまるで珍しくない。
「ほとんどは生活苦からこの仕事に飛び込むんだけどね。だって、手に職のない60過ぎの女が就ける仕事は清掃業か風俗しかないんだもの。ごくまれに好きでやってる人や、AVと掛け持ちしている人も交じるけど……」(同)
AV業界でも“JK(熟年高齢者)”市場は活気づいており、還暦女優はおろか、古希モノのタイトルも続々リリースされている。
制作プロデューサーが言う。「近年では『若い男優とシてみたい』『人生の記念に』と、60歳以上の一般女性から問い合わせを受けることもしばしばです。近親相姦モノなど愛好家の支持層は厚く、流通量は少なくとも息は長い」ちなみに現下(2016年11月6日現在)、日本最高齢のAV女優の御年は81歳だ。「生」が長引けば、「性」も長寿化するのは必然の成り行きか。
ただ、金銭を介する異性関係なら互いの立場も明確で線引きも明快だ。問題は、表立った上下関係や組織のしがらみ抜きで、どれだけ上手な対人スキルを積んでいけるか、にある。特に仕事以外では異性の扱いに不慣れな向きも多く、加えて、現役時代に立身出世を遂げた人ほど、リタイア後にフラットな人間関係をうまく築けず、地域社会でも苦慮する例は多い。
証左に、地域の民生委員や町内会員らがこぞって口にする言葉がある。それは「エリートほど使いものにならず、対応が面倒」というものだ。
内容をまとめると、地域の会合等に出席しても、(1)他人の話を聞かない、聞き入れない、(2)尊大な態度を貫く、(3)命令口調が多い、(4)女性を軽視する、(5)肉体労働を拒む、などの特徴が挙げられる。
地域で嫌われ孤立高慢な元エリートの悲しい末路
都内の地区会長の女性が渋面を作ったままで打ち明ける。
「公民館で開かれるイベントの会場設営をする際にも、自分はパイプ椅子一つ運ばずに、奥で踏ん反り返ってあれこれ周りに指示するだけ。『○○さんも一緒にやるんですよ』と声を掛けても、『何で俺が』といった風で、馬耳東風。一方で『このやり方は効率が悪い』など文句と理屈は人一倍で周りが疲れちゃうんですよ」
何度か注意や指摘を受けても言動を改めなければ皆から総スカンを食らい、結果として孤立する羽目に。となると、居場所もなくなり、「自分の価値を認めない奴らと一緒にいるのは不快」と、自ら接点を断って周囲とも距離を置き始める。近隣に近親者がいなければ、そのまま地縁も希薄になり、最終的に自宅で“閉じこもり”生活を続けた末に孤立死を迎える高ステータス・シニアは後を絶たない。
事実、配偶者に先立たれた高齢男性が、ゴミの分別や出し方が分からずに、室内に溜め込んだゴミに埋もれたままで孤立死し、腐乱死体となって発見されるのは今や日常茶飯事になっているのだ。
都内のハイヤー運転手歴20年の男性が話す。
「組織や会社では、下の者は上の話を聞くのが仕事だから、どんなつまらない内容でも、興味を持ったようにして聞いてくれる。その環境が長く続いたお偉いさんほど、幾つになっても自分の話は面白く、価値があって、誰もが聞きたがると信じて疑わないんですよ」
さらには、ポジションが高くなるほど公に拒絶される機会や頻度も減って、他者からの苦言や否定的な言動に免疫が乏しく、脆弱となる一面も加わる。
己が築き上げてきた社会的地位やプライドは、生きる上でのアイデンティティでもある。が、年を取るに連れ、肩書を抜きにした“ただの人”としてどこまで通用するのか。特権意識を振りかざさずに“一人の人間”として、どのように振る舞えるか──。
丸裸の自分自身の市場価値を見誤って社会性を失ったが最後、犯罪をも辞さないトラブル老人に堕ちる道程が待っている。
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